Dr.Advice【2】/「ニキビ治療」

ニキビ治療に用いる医薬品

ニキビ治療では、毛穴をふさがり難くしたり、ニキビ菌の繁殖を抑えたりする外用剤が用いられます。
毛穴をふさがり難くする外用剤にはアダパレン(ディフェリン™)や過酸化ベンゾイル(ベピオ™)があります。ニキビ菌の繁殖を抑える外用剤にはナジフロキサシン(アクアチム™)やクリンダマイシン(ダラシン™)などの抗菌剤があります。
2008年にアダパレンが保険適応薬に承認されたのを機に、日本皮膚科学会から「ニキビ治療ガイドライン」が発表され、2017年には改訂版が出ました。ニキビ治療の基本は、アダパレンや過酸化ベンゾイルで、これらを連用してニキビを治しながら、ニキビの出にくい肌に変えてゆく治療が推奨されています。ひどい時には抗菌薬の内服や外用も併用しますが、抗菌薬は耐性菌を生じる可能性があるために、長期間の併用は避けることになっています。ガイドラインにはイオウ製剤について「選択肢の一つとして推奨する」と記載されています。
アダパレンや過酸化ベンゾイルには刺激が出る副作用がありますが、イオウ製剤はこれらの薬剤に比べると効果は弱いものの、刺激が出ることはほとんどありません。イオウ・カンフルローションには毛穴を塞ぎ難くする作用に加え、軽い抗菌作用もあるので、初期の軽度のニキビの場合は試してみても良いでしょう。
当クリニックでは、医薬品治療だけでなく、ケミカルピーリングやレーザー治療、光線療法も取り入れています。ただし保険適応外ですので、希望する方に限定して行っています。

市販のニキビ医薬品

近年は米国などから販路を広げてきて日本国内で市販や通販されているニキビ治療薬も見られます。
ただ、日本国内で販売されているものと米国で販売されているものとでは、同じブランドのものでも配合成分が異なる場合があります。例えば米国では、日本では医師が処方する保険薬に含まれる過酸化ベンゾイルを含むものも市販されていますが、日本で販売されているものには含まれていないか、含まれていても極めて微量の配合となっています。
メーカーサイドでは、「日本人と欧米人との肌の違いを考慮して配合成分を調整しています」と表現していますが、実際は日本の法規制(薬事法)をクリアするための苦肉の策と言えます。
先にも述べたように、刺激があるなど医薬品には副作用を伴うものもあり、一般の人が安易に使用して問題が起きないようにするための規制ですので、それに従わなければなりません。その結果、同じブランドの製品でも、有効成分や配合量が異なるため、海外と日本とでは効果が違うことがあるという点に注意が必要です。
大和製薬のタイワクムメルシエキは、国産の市販ニキビ医薬品で、ドラッグストアでも販売されています。主成分のイオウは使用後に若干の硫黄臭と肌に白い粉が浮きますが、さしたる刺激もなく、抗菌作用のあるホモスルファミンも配合されているので、病院を受診するほどでもない初期のニキビの方は試してみて良いでしょう。

Dr.関 大輔

セキひふ科クリニック
院長・医学博士
富山大学医学部 臨床教授  

関 太輔 先生

プロフィール

  • 1983年 富山医科薬科大学医学部卒業
  • 1983年 富山医科薬科大学皮膚科入局
  • 1983年 富山医科薬科大学皮膚科助手
  • 1991年 富山医科薬科大学皮膚科講師
  • 1996年-1997年 アメリカ・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)皮膚科に留学。 主任:Peter M.Elias教授のもと「皮膚バリアー、特にセラミドに関する研究」を行う。
  • 2000年 セキひふ科クリニックを開院(富山大学医学部非常勤講師を兼任)
  • 2009年 富山大学医学部臨床教授

    ニキビダニ(毛包虫)

    多くの哺乳類にはニキビダニが常在し、毛包上皮を栄養源としているため、主に毛包部に寄生し、「毛包虫」とも呼ばれています。
    ニキビダニは、ニキビ菌と異なり小動物の仲間です。皮脂腺の発達している顔、胸、背中に寄生密度が高く、毛包の中で寿命を全うし死骸となって初めて排泄されます。それが毛孔の詰まりとなったり、それを栄養とするバクテリアなどの温床となったりして、ニキビや湿疹の原因にもなります。
    常在しているニキビダニもニキビ菌も、互いに牽制しあって均衡が保たれていれば許容範囲数が保たれ、害をもたらすということはまずありません。
    ただし、抗菌薬を長く使用していると、抗菌薬はニキビダニには効果がないため、均衡が崩れてニキビダニが増え過ぎてしまうということがあります。
    「ニキビ」だと思って、抗菌薬を用いてもなかなか炎症が治らないときは、ニキビダニの繁殖を疑ってみる必要があります。
    ニキビダニに対して有効な医薬品としては、イオウ製剤があります。つまりタイワクムメルシエキは、ニキビ菌にもニキビダニにも有効であるといえます。

    ニキビ予防とセルフメディケーション

    大人ニキビは、前述しましたように、不規則な生活やストレスによって角質の代謝に乱れが生じ、毛穴に皮脂が詰まることで発症します。また、ストレスが高まるとホルモンバランスが崩れ、男性ホルモンが優位となって皮脂分泌が高まります。男性ホルモンの活性を抑える治療薬もありますが、できるだけ規則正しく、ストレスを溜めないような生活に整えていくことがニキビ予防に繋がります。
    前髪を触る癖のある方は、皮膚に刺激が加わり、防御反応でその部分の角質が厚みを増し、皮脂の排出に支障が生じ、毛穴に皮脂が溜まりやすくなることもあります。
    また、ニキビができると、とりあえずメイクで隠すという方もいらっしゃいます。これは、却って毛穴を塞いでしまいます。クレンジングなどで毛穴の詰まりを落とすことができれば良いのですが、逆に落とし過ぎて保湿成分までも失われると、代償的に角質は厚みを増すので、皮脂が溜まりやすい状態となり、ニキビを進行させかねません。
    炎症がひどい場合は皮膚科専門医での治療は欠かせませんが、そうなる前に毛穴が詰まる原因を作らないように心掛けることも重要です。また、「白ニキビ」などの初期の段階で、イオウ・カンフルローションなどの市販医薬品を用いてセルフメディケーション(自己治療)をすることもできます。(了)
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